筆かけにかけた筆
 外苑前教室で唯一の学童は小学校六年生です。学校で使っていた筆を見せてもらったら、カッチカチに固まった状態でした。学校では、お習字の筆を洗わないのだそうです。たぶん、どこの学校でも同様でしょう。私が小学生だったときはどうだったか、あまりにも昔で思い出せません。

 とりあえず、その生徒さんは自由書道指定の学童用の筆を買うことになり、筆の洗い方もしっかり覚えたので、もうカッチカチになることはないでしょう。

ボウルに水を貯めて筆を洗います

1.筆は根元をしっかり洗うことが重要

外苑前教室では、次のような方法で筆を洗ってもらっています。

・ボウルに水を張って、筆を入れてゆすって墨を落とす
・最初のうちは、すぐにボウルの水が真っ黒になるので、水を入れ替えながら何度かこれを繰り返す
・ざっくり墨が落ちたら、新しい水に入れ替えて、ボウルの底に筆の根元をドンドンと叩きつけるようにして墨を出す
・何度かドンドンやったら水の中でバサバサとゆする
・水を取り替えながら「ドンドン、バサバサ」を繰り返す
・水に墨が出なくなったら、筆の鋒を素手でぎゅっと握って手のひらを見る
・このとき、手のひらが黒くなったらまだ墨が落ちていないので、「ドンドン、バサバサ」をくりかえす
・鋒をぎゅっと握っても手のひらが黒くならなかったら、改めて鋒を水につけてから丁寧に鋒を整えながら水を切る
・できるだけしっかり水が切れるように、ある程度の力でぎゅっと握って水を切る
・筆掛けに吊るして乾燥させる

 動画で解説しています。


2.ドンドンは乱暴なやり方ですが

 筆の鋒の根元は、糸でしっかりと結ばれています。ある程度の値段以上の、しっかりした作りの筆なら、職人がしっかりと結んでくれているので、ドンドンと根元をついても壊れるようなことはありません。
 ただ、そうはいっても根元をドンドンつくような洗い方は乱暴な洗い方ではあります。
 なので、ざっと墨を水に流したら、鋒先だけ水につけて自然に墨が根元の方から溶け出すようにするという洗い方もあります。もちろんこちらの方が筆に負担をかけないやり方です。でも、あまりにも時間がかかりすぎます。
 使うたびに、しっかり筆を洗うことを習慣にしていれば、筆の根元に墨がたまって固まってしまうようなこともありませんので、ドンドンやるのも最低限ですみます。ですから、手早く墨を落とすために「ドンドン、バサバサ」方式をお勧めしています。

 ちなみに、「ドンドン、バサバサ」方式で、一度だけ根元の縛りがほどけて、鋒がバッサリと崩れてしまったことがあります。それは、手入れが悪くて根元に墨がたまって固まってしまっていた筆で、固まった墨が根元を膨らませて、締めてあった紐が緩んでいたためでした。そのような経験もあり、根元に墨がたまってしまわないように、使うたびにしっかり筆を洗うようにしています。それ以降、筆の寿命より先に「ドンドン」によって筆を壊したことは一度もありません。

3.シャンプー・リンスは使っていいのか?

 毎回きちんと筆を洗っていても、かなり使い込んでくると毛の1本1本に墨色が染みついて、鋒全体が黒ずんできます。特に、墨汁を使っている筆はそのような傾向があるように思います。
 そんな時は、シャンプーを使って洗うととてもきれいになります。時々、洗濯石鹸で洗うと良いということも聞きますが、私は石鹸よりシャンプーの方が安全だと考えています。
 筆の毛は、動物の体毛ですので、人間の髪の毛と同じようにアルカリ性に弱いのだそうです。なので、アルカリ性の石鹸ではなく、人の髪の毛にも使えるシャンプーの方が筆には良いと思います。
 さらにリンスまですると、筆の毛もサラサラに仕上がって、いい匂いさえしてきます。シャンプーで失われた油分を補うので、リンスもある程度は効果的かもしれません。

 私は、シャンプーするのは墨汁を使用する筆だけにしています。筆自体も、墨汁を使用するもの、固形墨しか使わないものと分けています。さらに言うと、お値段の張る筆は、墨汁を使いません。固形墨を使用していると、使うたびに筆に微量の膠成分が残り、筆に自然なコシが出てきます。それをシャンプーしてしまうのはもったいないと思います。
 墨汁を多用する方の筆は、墨汁の化学成分が筆に付着してしまうので、汚れが気になってきたらシャンプー・リンスするのです。


 筆の洗い方については、検索するとかなりたくさんのウェブページが見つかるので、それらも参考にされるといいでしょう。また、先生によってもそれぞれお勧めの洗い方がありますので、ご自身の先生の指導に従ってください。