父、渓楓は今年86歳。もう昨年から自分のプライベート教室は開いていない。
 会社勤めをしながら、書家としても活動してきた父だが、会社を辞めてから本格的に自分の教室を始め、週3日、奇数週、偶数週のクラスがあったので、最盛期には6クラスを教えていました。おそらく、すべてのクラスを合計すると3〜40名の生徒さんがいたのだと思います。

 近年は、クラスの数はぐっと減らして2クラスとなっていましたが、私も含め残っていた生徒は通うべき教室を失ってしまいました。
 みなさん古くからの父の生徒さんですので書歴も長く、高段者ばかり。なので、教室にくるのももう父に会うために来るような雰囲気になっていました。
 そういう意味でも、父の教室がなくなったことは生徒さんには寂しいことのようです。

 昨年父は2度入退院をくりかえし、体力ががっくり落ちてしまったようです。毎週1日リハビリに通いながら、それでも毎日臨書しています。
 医者からは2時間以上続けて机に向かわないようにと言われています。

 先日、父の教室で使っていた道具をたくさん譲り受けました。
 どれも30年ほど使い込んだ古い道具です。教室用なので、安価な硯や文鎮です。
 使い古してかなり年季の入った安物の硯ですが、30年前ともなると今の安い硯よりも石がいいようです。すべて雨畑の硯でした。

 私の教室、外苑前教室で大切に使わせていただこうと思っています。