外苑前教室で、今年10月の終わりに行われる社中展「自由書道展」に向けての作品作りが佳境に入ってきています。
 昨年入会の方、今年7月入会の方は初めて展覧会作品を作ることになり、それぞれに頑張って取り組んでいます。

 が、普段の教室では液体の墨汁を利用しているため、固形墨をするのがなかなか大変。書道を始めて間もないので、自分用の良い硯もなく、ましてや半切のような大きな作品の硯は当然持っていません。

 墨をするのに時間がかかっているのも気の毒なので、みんなで使えるように安い羅紋硯(らもんけん)の円硯を購入してみました。


1.羅紋石

 羅紋硯の硯材は「羅紋石」と言われ、中国・江西省で採石される石で、粘板岩の一種ということです。岩の層が重なっている岩盤を縦に割って切り取っているため、その層が表面に模様として現れ、横に細かな筋模様となっています。この模様から「羅紋」という名称がつけられました。

2.歙州硯(きゅうじゅうけん)と間違われることも

 羅紋硯と似た硯に「歙州硯」がありますが、こちらは中国・江西省婺源(ぶげん)県歙渓(きゅうけい)で取れる硯材で、全く別のものです。歙州硯は「端歙(たんきゅう)」ということばがあるように、端渓硯と並び称されるもので、値段もそれなりにします。一方、羅紋硯は大量生産されていて安価なものが多いです。


3.なかなかどうして羅紋硯

 購入した円硯ですが、安価なものだけあって機械加工で作られていて、硯面はガタガタ、とてもこのまま墨をすりたくないというような状態でした。
 そこで、100番・120番・200番・360番と耐水ペーパーで丹念に硯面を整え、600番まで行くと機械加工の凹凸はすっかりなくなり、指で触っても滑らかになりました。もちろんこれでは鋒鋩(ほうぼう)まで削り取られてしまっている状態です。ここから、硯用の砥石をかけ、さらに仕上げに「クリームクレンザー ジフ」で磨き上げます。ジフの研磨剤が鋒鋩の大きさに対してちょうど良い細かさなので、いい感じに鋒鋩を立たせてくれるのです。

 仕上げた羅紋硯で唐墨をすってみると、これがなかなかよくおりていきます。石質も軽いので、持ち運ぶ硯としてはかなり実用性があるなと思いました。
教室のみなさんの作品作りの役に立てば、買った甲斐もあるというものです。