「書のあらゆる筆法が含まれている」と言われる「永字八法」。いやいやいや、基本点画って8種類だけじゃないし、と、思いましたし、今も思っているところはあるのです。とは言いながら、こういう原則のようなものは説明しやすいし、わかりやすいとも思います。
 いや、あらゆる筆法とは誰も言っていなかったかも。主要な、というか基本的な8種類ですよね、きっと。確かに「横画」「縦画」「左払い」「右払い」と「点」ができればかなりいい線いくと思いますし、それに「ハネ」までついている永字八法は、かなり書の基本的な筆使いを抑えていると改めて思いました。

1.では、早速「永字八法」書いて見ましょう



2.なるほど、やはり物足りない

 確かに基本的な筆使いは含まれていると思いつつ、何か物足りなさを感じてしまいます。例えば「点」。単に点と言っても「背中が丸い点」や「逆に反らす点」、「黒」の四つ点の一つ目のように上から入筆する点もあります。上の動画では反らすような点を書きましたが、背中の丸い点で書いてもいいところです。
 「横画」だってそりあげる横画や伏せる横画もありますし、「縦画」だって止めるものや抜く縦画だってあります。
 というわけで、永字八法はそれぞれの点画がすべて違う書の基本点画で構成されていて、一文字の中で8種類の点画を学ぶことのできる字だ、ということなのでしょう。

3.永字八法の構成要素

永字八法の8種類の構成要素は、次のような構成要素で呼ばれています。

側(ソク) = 点
勒(ロク) = 横
努(ド)  = 竪、すなわち縦
趯(テ)  = 鉤、すなわちハネ
策(サク) = 提、右上への跳ね上げ
掠(リャク)= 撇が長く現されたもの、すなわち左払い
啄(タク) = 撇が短く現されたもの
磔(タク) = 捺、すなわち右払い

この(中国語の)呼び方は、暗記する必要はないと思います。私も暗記なんかとてもできないので、こうしてここに書き記しているわけです。


漢字の完成形(楷書)

上條雅峰の書と書にまつわることなどを綴ったブログです。日本自由書道本部連盟理事、外苑前教室を主宰。