《赤間硯》(あかますずり)
山口県厚狭郡西村で採石される硯材(赤間石)で造られたすずりのこと。
《握圧》(あくあつ)
筆を持つときに握る力、握力。強く握りすぎると自然で柔らかな運筆をすることができない。
《悪筆》(あくひつ)
字を書くことが下手、字が汚いことを言うが、謙遜して言う場合も多い。
《字》(あざな)
本名以外の呼び名のこと。中国で元服の時につけられた。中国では本名で呼ばれることを嫌い、字で呼び合うのが礼儀であった。
《葦手書》(あしでがき)
水辺に葦や水鳥などを描いた柄をあしらった中に書かれた和歌や文字のこと。
《厚様》(あつよう)
やや厚めに漉いた紙のこと。厚めの紙。室町以降は「
鳥の子紙」とも言った。「厚様紙」「厚紙」とも言う。
《当て字》(あてじ)
漢字としては正しい読み方ではないが、意味を伝えるために当てた漢字。「田舎(いなか)」など。
《雨畑硯》(あまはたすずり)
山梨県南巨摩郡で採石される硯材(雨畑石)で造られた硯のこと。「雨端」とも言う。
《暗書》(あんしょ)
手本を見ないで、手本の字を覚えて書くこと。
《渭原端渓》(いげんたんけい)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の鴨緑江付近で採石される硯材(渭原石)で造られた硯のこと。粘板岩で紫色の中に青斑があるが、鋒芒が強くないと言われている。
《意先筆後》(いせんひつご)
気持ちが先で、筆は後。すなわち、気持ち・意気込み・気力があり筆はその後に従って動くという意味。良い字を書くための心構え。
《異体字》(いたいじ)
現行の書体にも旧字体にもない、形の異なった字。「別字」とも言う。
《板碑》(いたび)
石の板で作った卒塔婆のこと。
《一字一破》(いちじいっぱ)
隷書体で横画・右払いに
波磔(はたく)をつけるが、その場合一文字に一ヶ所限ると言うこと。
《一字銘》(いちじめい)
短冊や懐紙などに名を記す場合、省略して一文字を使うこと。例:「雅峰」を「雅」とするなど。
《一文字》(いちもんじ)
掛軸の本紙の上下を横に留めているもの。他の部分より上質の裂地を使う。
《一筆》(いっぴつ)
一度の墨継ぎで一気に書くこと。一画ごとに墨を継いでいると筆勢と筆脈が途切れるのでよくない。「一筆書き」とも言う。文章をひとりで書いたものについても言う。
《命毛》(いのちげ)
筆の先端の毛で、柔らかく一度も切られたことのない部分。毛先の先端のもっとも大切。「
のげ」とも言う。
《異筆》(いひつ)
通常、ひとつの文章は一人の人が書き上げるが、別の人の筆跡が入ること。
《遺墨》(いぼく)
故人の書や、残された書。
《諱》(いみな)
生前の本名のこと。中国では本名を呼ぶことを忌むことから言われるようになった。
《意臨》(いりん)
形よりも精神的なものを重視して書く「
臨書」のこと。すぐれた書の人間性、民族性、時代性などを尊重し、形だけでなくこれらを吟味し内面的要素を考慮する。
《意連》(いれん)
文字の点と線が目に見えない気持ちによって一貫していること。
《いろは歌》(いろはうた)
すべての仮名をひとつも重複させずに作られた文章。五七調になっている手習い歌のひとつ。
「色はにほへど 散りぬるを 我が世たれぞ 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見し 酔ひもせず」
この歌が文献上初めて登場するのは1079年成立の『金光明最勝王経音義』(こんこうみょうさいしょうおうぎょうおんぎ)で「
万葉仮名」で書かれている。空海の作であるという俗説もあるが、空海に時代には今様の歌の形式がなかったこと、空海に時代には上代特殊仮名遣の影響があったことなどから否定されており、作者は不詳である。
他に「鳥啼く声す 夢覚ませ 見よ明け渡る 東を 空色映えて 沖つ辺に 帆船群れゐぬ 靄の中」という「鳥啼歌」(とりなくうた)もある。
《印影》(いんえい)
印を押してできた姿。「印景」「印蛻」(いんずい)とも言う。
《陰記》(いんき)
石碑の側面や背面に、建碑の理由や刻者などが彫ってあるものを言う。
《殷墟文字》(いんきょもじ)
「
甲骨文字」のこと。亀の甲や獣骨などに書いた現存最古の文字。殷の都の遺跡「殷墟」で大量に発見されたことから。
《印矩》(いんく)
落款印を押すときの定規のこと。さまざまな材質や形がある。
《印稿》(いんこう)
印を彫る前に制作する、彫る字と形の原稿のこと。厚紙に墨を塗り印面と同型のものをつくり、その埠の中に原稿をもとに刻する文字を朱で書き入れる場合もある。
《印盒》(いんごう)
印肉を入れる容器のこと。
《陰刻》(いんこく)
「
刻字」のとき、文字を彫りこみ、他は残す方法。
《印材》(いんざい)
印を彫る材料。石材が多く、特に蝋石(花乳石)が優れていて一般的である。他に次のようなものがある。
・金属類 金、銀、銅、鉄、錫など
・植物類 竹、木など
・焼物 陶器、磁器、瓦など
・宝石類 玉、翡翠、珊瑚、瑪瑙、琥珀など
・化学製品 合成樹脂、リノリュウム、ゴムなど
《引首印》(いんしゅいん)
作品の右肩に押す印。
「関防印」(かんぼういん)」とも言う。
《印床》(いんしょう)
篆刻で印材を固定する台のこと。
《印章》(いんしょう)
印の総称。印・印鑑・はん・印判・璽印とも言う。中国の印章は、青銅印が三個、殷時代のものが出土している。春秋戦国時代になると主従関係がはっきりして、印のもつ役割も辞令と勲章を兼ねた役割をもつようになった。尊卑貴賎に関係無く「璽」といっていたのだが、秦代から官印の制度が定められ、皇帝だけが「璽」と称し、臣下のものを「印」といった。唐以後は「宝」ともいい、漢以後は「章」といった。同じ印でも天皇の印を「御璽」というのがこれである。
《印褥》(いんじょく)
落款印を押すときの下敷のこと。
《印箋》(いんせん)
できあがった印を押し試したり、印影を蒐集する用祇。
《印泥》(いんでい)
一般でいう印肉のこと。
《印刀》(いんとう)
篆刻で印を彫る時に使う鉄製の小さい刀のこと。
《引頭》(いんどう)
古文書で、大工のかしらのこと。
《印譜》(いんぷ)
刻した印を押し、集めた冊子。
《陰文》(いんぶん)
文字の部分を彫りこんだもの。「
白文印」とも言う。
《陰暦》(いんれき)
太陰暦のこと。
《烏金拓》(うこんたく)
拓本の一種で、濃墨で数回重ね打ちして烏のように真黒く光沢のある状態に仕上げたもの。
《薄様》(うすよう)
薄く漉いた紙のこと。
《内祝い》(うちいわい)
「内々の祝い」ということの他に「自分のことを自分で祝う『自祝い』」の意味が含まれている。一般に慶事のお返しや病気見舞いのお返しを言う。祝いの日から一週間以内に配るのが常識とされている。本来、内祝いはお返しではない。
《裏打ち》(うらうち)
作品のしわを伸ばしたり、長期保存のために、作品の裏に相和紙を貼ること。作品を裏にして霧吹きされ完全に濡らし、この上に薄い糊を打ち、和祇を貼りつける。
《運刀》(うんとう)
篆刻で「印刀」を動かして彫り進むこと。
《雲盤》(うんばん)
「
色紙」や「
懐祇」などの小品を入れる額のこと。表面にガラスをはめ、壁掛けとして室内に展示する。
《運筆》(うんぴつ)
筆を進めること。筆はこび。遅速緩急筆圧などが大切である。
《影印本》(えいいんぼん)
「
拓本」は、出来上がる数が少ないため、石などに刻して印刷してできたもの。
《永字八法》(えいじはっぽう)
「永」の字ひとつで、漢字のすべての「点画」が習得できるという基本的な八つの部分。後漢の「蔡よう」が書法研究の結果創造したと言われている。「側(そく:傾ける)・勒(ろく:きざむ、押える)・努(ど:弩、石弓)・趯(てき:躍、おどる)・策(さく:馬をたたく鞭)・掠(かすめる、はらう)・啄(たく:鳥がついばむ姿)・磔(けつ:ひきさく)」
《楹聯》(えいれん)
「
対聯」と同義。
《干支》(えと)
「十干十二支」のこと。昔、中国では万物は五行(五つの要素)=木・火•土•金•水で成り立っていると考えていた。この五行をさらに陰と陽「兄・弟」(え・と)に分けて「十干」とした。「十二支」は、もともと月の符号であったが、順序を表すようになり、十干十二支とを組み合わせて年号を表すようになった。
《絵巻》(えまき)
物語、伝記、説明等を詞と絵で描きあわらしたもので、「絵巻物」とも言う。中国から伝来したもので、縦幡30~39センチくらいのものを横につなぎ10メートル前後のものが多い。
《円勢》(えんせい)
「点画」に丸みを持たせた線で書いたもの。篆書の線などはこれにあたる。文字から受ける印象が穏やかになり、暖かさ、深みが出る。
《猿面硯》(えんめんけん)
猿の顔に似た形状をした硯のこと。瓢箪の形をした硯。
《御家流》(おいえりゅう)
身分の高い家で伝承される流儀を意味するが、書道においては尊円流(そんえんりゅう)の流れをくむ流派を言う。鎌倉時代末期の尊円親王を祖とする書派で、小野道風、藤原佐理、藤原行成の書を加味し、流麗豊肥、重厚である。この流派の門人たちが秀吉や家康の右筆として迎えられて用いられた。
《押脚印》(おうきゃくいん)
書画の下の方に押す印のこと。内容は、戒め的な語句、熟語、「堂号」など。
《黄檗の三筆》(おうばくのさんびつ)
禅宗の一派「黄檗宗」の僧で、書に優れた、隠元隆琦(1592~1673年)、木庵性瑫(1611~1684年)、即非如一(1616~1671年)の三人をいう。江戸時代初期、中国から帰化し、仏教と共に和様書道にも影響を与えた。
《往来物》(おうらいもの)
平安時代後期から明治時代初頭にかけて、主に往復書簡などの手紙類の形式をとって作成された初等教育用の教科書の総称。当然ながら、墨字されたものである。
《お中元》(おちゅうげん)
元来は古代中国の星祭りのこと。1月15日が上元、7月15日が中元、10月15日を下元といい、天帝に供え物をして、人間がもって生まれた汚れを清めた。この習慣が日本に伝えられ、仏教の盂蘭盆会の行事と一緒になった。さらには江戸時代の商取引において、お盆と年末が決算期であったことから、この時期に贈答品を贈る習慣が生まれた。それが現在の「お中元」「お歳暮」となり、一般に広がった。したがって「お中元」は十五日までに済ませ、その日が過ぎると「暑中お見舞い」とする。
《押界》(おっかい)
写経をするとき、通常は紙に線を引くが、墨で線を書かず「へら」や「押し形」で引くことをいう。跡がつくだけで線に色がつかないことから「白界」とも言う。
《踊り字》(おどりじ)
同じ音を繰り返す符号のこと。「繰り返し符号」。
《男手》(おのこで)
漢字のこと。平安時代、男が使用する文字や公文書はすべて漢字であった。男が「かな」をつかうことは恥ずかしいとされていた時代のことば。「真名」(まな)ともいう。
《折帖》(おりじょう)
一定の幅で折り畳み、表祇をつけた冊子のこと。装丁の一形式である。「巻物(巻子本)」だと見たい部分を出すまでに、長々と広げなくてはならないが、折帖の場合、見たい部分がすぐ広げられるという利点がある。経典や法帖、習字の手本に多く使用されている。「折り本」とも言う。
《折れ》(おれ)
文字の点画で、一転して折れるところ。「
転折」のこと。
《音》(おん)
漢字の読み方で、中国的な発音。「中」を「ちゅう」と発音するのが「音」、「なか」と発音するのは「訓」である。
《女手》(おんなで)
「
かな」のこと。平安時代、通常女性は「かな」を使ったことから。
コメント
0 件のコメント :
コメントを投稿