書道用語辞典 【さ行】
《災害見舞い》(さいがいみまい)
火災、風水害等の災害に贈るお見舞い。すぐに役立つ食料品や寝具、身の回りの品、現金等が喜ばれる。表書きは「御見舞」とする。お返しは不要。当面の生活が落ち着いてからお礼状を出す。《細太》(さいた)
「点画」の太さと細さのこと。筆の上下の運動、抑揚によって生じる。書の造形上、非常に重要である。《彩墨》(さいぼく)
黒以外の色の墨のこと。白、藍、朱、緑、黄の5種類を「五彩墨」という。《座金》(ざがね)
掛軸の紐を留めている金属のこと。「鐶座金」「鐶」とも言う。菊や梅の花形が多い。《左軽右重》(さけいうじゅう)
漢字の「結体」のひとつで、左が軽く右を重くつくること。特に隷書では大切である。《捌き筆》(さばきふで)
毛を糊で固めずに、根元までおろした筆のこと。墨を充分に含ませることができるので、抑揚や緩急が自在にできる。「散毛筆」とも言う。《三稿》(さんこう)
顔真卿の書いた三つの草稿本「祭姪文稿」「祭伯文稿」「争坐位帖」のこと。《三色紙》(さんしきし)
「升色紙」「継色紙」「寸松庵色紙」のこと。《傘寿》(さんじゅ)
八十才の祝い。「傘」の略字が、八十に見えるため。《三跡》(さんせき)
小野道風、藤原佐理、藤原行成のことで、和様書道の完成者である能書家3人。《三筆》(さんぴつ)
晋、唐の書風を取り入れた能書家の3人のことで、空海、橘逸勢、嵯峨天皇の3人を指す。その他、下記も三筆も呼ばれる。
黄葉の三筆 = 隠元隆鐗、木庵性瑫、即非如一
寛永の三筆 = 近衛信手、本阿弥光悦、松花堂昭乗
世尊寺流の三筆 = 藤原行成、藤原行能、藤原行尹
幕末の三筆 = 市河米庵、巻菱湖、貫名菘翁
土佐流の三筆 = 土佐光起、土佐光長、土佐光信
《自運》(じうん)
自分の創意で自由に制作すること。創作作品のことを言う。《色紙》(しきし)
書画などを書く四角形の厚紙のこと。●大きさ
現在は一般的に縦27.3センチ横24センチだが、古くは縦19.4センチ横17センチを大色紙、縦18.2センチ横16センチを小色紙、小色紙より小さいものを「豆色祇」といった。
●色紙の上下
模様によって上下がはっきりしている場合の他は、およそ次のように判断すればよい。
①雲引きの場合は、空間の広い方が上。
②色に濃淡のある場合は、濃い方が上。
③砂子の時は、広く大きくちらしてある方が上。
④青と紫の場合は、青が上。
⑤金と銀、金と他の色の場合は、金が上。
●色紙の表裏
まっ白い色紙の場合、金箔のある方が裏だから注意すること。
●継き色紙
小野道風が書いたと言われる「かな作品」。別名「続き色紙」とも言われ、綴じられた冊子であった。1906年(明治39)に、17人が切り分けて保有した。このとき形良い13.5センチ四方の色紙の型に切りとった。古今集から25首、万葉集から5首、出典不明一首の和歌が書かれている。一枚の紙に一首の歌でなく、色の違った二枚の紙に書かれているため、この名がついたと言われる。
●寸松庵色紙
紀貫之が書いたと言われる「かな作品」。堺の南宗寺の障子に36枚貼られてあったが、商田の家臣佐久間将監が、そのうち12枚を持ち帰り大徳寺山内の自分の茶室「寸松庵」に愛蔵したことから、後にこう呼はれることとなった。これも元は冊子であったが今は13.5センチ四方の色紙になっている。すべて古今集の歌である。
●升色紙
藤原行成が書いたといわれる「かな作品」。これも元は冊子であった。屑原深養父の歌、判明分39首。色紙が方形で升の形をしているため、この名がついたと言われるが、以上の三色紙はすべて方形である。
《色紙形》(しきしがた)
屏風や障子に貼った和歌や漢詩を書いた色紙。平安後期、藤原時代から盛んになった。《軸》(じく)
掛軸を省略して言う語。《軸木》(じくぎ)
掛軸の下部の横木のこと。→「八双」→「表装」《軸先》(じくさき)
掛軸を巻いた時、下部のはみ出している部分のこと。→「表装」《指示文字》(しじもじ)
漢字の「六書」のひとつで、数量や位置などの柚象的な概念を字形の上で表すものを言う。例:一、二、上、下、末、本
《四十九日》(しじゅうくにち)
仏式で、人の死後49日のこと。「忌明け」「満中陰」ともいう。死者は冥土にいくと、閤魔の庁で7日目ごとに審判があり、最後の7回目が判決の日とされ、最も重要であったことによる。この「忌明け」後に「香典返し」をし、包み紙には「満中陰」と書くのが一般的。《下敷》(したじき)
字を書くときに書き易いように下に敷くもの。適度な弾力があり、しわになりにくく、墨が付着しないものがよい。一般的にラシャが使われる。硬筆の場合は、硬めのビニール製がよい。《七五三》(しちごさん)
男は3才と5才、女は3才と7才の時に子供の成長を祝う風習。11月15日に晴着を着せて神社に詣でる。11月はじめに「お祝」として贈るが、お返しは不要という。晴着を見せに行き、千歳飴を配るところもある。《七言絶句》(しちごんぜっく)
一行7文字、4行の漢詩のこと。《七言律詩》(しちごんりっし)
一行7字、8行の漢詩のこと。《指頭書》(しとうしょ)
指の先に墨をつけて書いた字のことで、一般的ではないが、時に中国で見かける。《示範》(じはん)
実際に書いて模範を示すことを言う。《始筆》(しひつ)
文字を書く最初の部分のこと。文字を書く場合、この始筆は重要で、文字全体の雰囲気を決めてしまうと言っても過言ではない。→「起筆」《試筆》(しひつ)
年頭の書のこと。「書初め」と同じ。《死墨》(しぼく)
すって幾日も経過した墨汁のこと。→「墨」《斜画》(しゃかく)
斜めの線こと。縦画、横画でないもの。《写経》(しゃきょう)
仏教の経典を書き写すことで、修業の—つとしても行われる。7世紀の始めころに仏教が伝来して以降、修業や印刷の代用として広まった。最もよく写経されるのは、「般若心経」であるが、本文が17行で、練習しやすく手頃だからである。そのため般若心経は、練習用紙と手本も販売されている。《雀頭筆》(じゃくとうひつ)
鋒が短く、雀の頭のような形をした筆のこと。(しゅいん)《朱印》
→「朱文印」《習字》(しゅうじ)
書道全般を「習字」と呼ぶ場合もあるが、通常は、字を美しく書くために勉強することを言う。《集字》(しゅうじ)
必要な字を、色々な本や作品から集めること。《集字碑》(しゅうじひ)
いろいろの文献の中から必要な字を集めて造られた碑のこと。《集帖》(しゅうじょう)
多くの人の書を集めて刻し、一冊の「法帖」にしたもの。→「専帖」《終筆・収筆》(しゅうひつ)
筆線の一番最後の部分。筆止め。起(始)筆→送筆→終(収)筆。《柔毛筆》(じゅうもうひつ)
羊毛など柔らかな毛で作られた筆。繊細な線を書くのに適している。《宿紙》(しゅくし)
一度文字を書いて使用した紙を漉き返した紙のこと。平安時代末期から作るようになったが、墨を充分に脱色することが難しいため色が浅黒い。「薄墨紙」「水雲紙」とも言う。《熟字訓》(じゅくじくん)
日本語において、意味を重視して当てた複数の漢字からなる単語に訓読みを当てたもの。それぞれを単漢字に分解しても熟字訓の要素がなく、その読みも現れない。常用漢字表の付表に116語が示されている。例:「あす→明日」 「いなか→田舎」 「かわせ→為替」など。→「当て字」
《宿墨》(しゅくぼく)
すって一晩経過した墨汁のこと。独特のにじみが出る場合が多い。→「墨」《寿山石》(じゅざんせき)
篆刻に使われる印材の一種で、福建省福州近郊の寿山郷、月洋郷から産出する石材。《出産祝》(しゅっさんいわい)
一般に、出産を知ってから1〜2週間以内に贈る。持参する場合は、出産経過をみる配慮も必要。表書きは「御祝」。お返しは、出産後一か月以内で、表書きは「内祝」として、赤ちゃんの名前とする。《寿塔》(じゅとう)
生前に建てておく塔婆のこと。《朱筆》(しゅひつ)
添削や手本を書くとき「朱墨」で書いたもの。《朱文印》(しゅぶんいん)
篆刻で、文字の部分が朱色となる印。文字の部分が彫り残してある印。楽観印の場合、通常は「雅号印」に用いる。→《篆刻》《朱墨》(しゅぼく)
朱色の墨。篆刻で印面に配字をするとき、古書籍に注釈を書き入れるとき、書の添削のときなどに使う。《入木》(じゅぼく)
東晋の王羲之が木に文字を書いたとき、その字が深く染みとおって、いくら削っても消えなかったという故事から、墨跡のことを言う。転じて、熱心に書道を習うこと。書道のことを「入木道」とも言う。《潤筆》(じゅんぴつ)
筆に墨が十分に含んでいる状態で書いた字。→「渇筆」《小楷》(しょうかい)
小いさく端正に書かれた楷書。《象形文字》(しょうけいもじ)
ものの形をかたどって作られた文字。《少字数書》(しょうじすうしょ)
主として一文字くらいの少字数を作品とした書作品。独特の理論付けをしていることが多い。簡単に取り組めそうに思えるが、基礎書道ができてからでないと独善となる危険もある。戦後、1960年頃から一部の書家の提唱で盛んになった。《小字先習論》(しょうじせんしゅうろん)
半紙に大きく字を書いて練習するより、20〜30字の小字によって字形をしっかり学習した方がよいとする見解。実際に中国では多くこれを実施している。《浄書》(じょうしょ)
清書のこと。または、練習をふまえずに丁寧に美しく書くこと。《肖生印》(しょうせいいん)
「篆刻」の一種で、文字でなく、干支や鳥、魚なとを彫った印のこと。この場合、顔の向きはどちらでもよいとされる。《章草》(しょうそう)
隷書を基盤として、これを簡略化した書体。これを発展させたものが「草書」となる。前漢時代にはすでに現れ、後漢末期には草書が現れている。《消息》(しょうそく)
手紙、音信のこと。《鐘鼎文》(しょうていぶん)
青銅器の製作が盛んだった紀元前1100年頃から紀元前200年ころまでの中国で、その青銅の鐘や鼎に鋳込まれた文字のこと。「金文」「金石文」ともいう。書体は「篆書」の初期のもので、字形も比較的簡単であるが、年代・地方によって字形は少しずつ異なる。またこれを総称して「古文」とも言う。《小篆》(しょうてん)
中国、秦の始皇帝の時に定められた漢字の統一書体。始皇帝が丞相・李斯に命じて作らせたとされている。始皇帝は中国を統一した後、各地でまちまちだった諸制度、度量衡、貨幣などを統一整備したが、中でも文字の統一は、最も重要なものだった。「大篆」を簡略化し、美しくして整えられた。普通「篆書」というとこれを指す場合が多い。《条幅》(じょうふく)
縦136cm、横34.5cmの縦長の紙に書かれた作品を軸物にしたもののこと。そこから、その紙の大きさを表す言葉としても使われる。条幅サイズの紙は「半折」ともいい、全紙を縦長半分にした大きさである。→「堂幅」《常用漢字》(じょうようかんじ)
1981年に文部省が選定した1945字の漢字のこと。一般に使用する漢字の範囲の目安として決められた。義務教育の教科書では、常用漢字以外の漢字を使用する場合は、ふりがなをつけてある。《書格》(しょかく)
書の品格のこと。《書式》(しょしき)
証書や願書、届書など、一般的に定められた書き方のこと。また、書一般の伝統的な書き方のこと。《書写》(しょしゃ)
文字を書き写すことを意味し、小中学校での「習字」「書き方」についてもこのように言う。現在は、小学校三学年から毛筆を履修することとなっている。《書聖》(しょせい)
書の歴史の中で、卓越した技能を持った人に対する尊称。《書跡》(しょせき)
手書きした文字のこと。「筆跡」「手跡」《書体》(しょたい)
文字の形や書風のことを言う。「篆書・隷書・草書・行書・楷書」《書丹》(しょたん)
「書」と同意義。石碑などに「○○撰文」と書く場合、それとの釣り合いをとるため「○○書丹」とする。《暑中見舞い》(しょちゅうみまい)
24節気の「大暑」中のことを「暑中」といい、7月下旬から立秋(8月6日頃)までにあたる。その暑い時期を見舞う習慣で、葉書や物品を贈ることもある。《初唐の三大家》(しょとうのさんたいか)
欧陽詢、虞世南、褚遂良の三人の能書家のこと。《書風》(しょふう)
書の風格のこと。書者の個性や美意識の違い、時代背景などから様々な書風となる。《書法》(しょほう)
「書道」のことを中国では「書法」と言う。《真跡》(しんせき)
肉筆の書のこと。また、印刷、刻字あるいは模作・贋作に対して本物の書のこと。《人造硯》(じんぞうけん)
プラスチックやセラミックなどで作られた人造の硯。天然の硯石で作られていないもの。《新築祝》(しんちくいわい)
家などを新築した後、およそ半月以内くらいに贈る。表書きは「御祝」とし、お返しは新居に落ち着いてから「内祝」とする。《人名用漢字》(じんめいようかんじ)
「常用漠字」ではないが、人名に限って使用してもよいとして、法務省が定めた284字の漢字で、1990年4月から166字が追加された。常用漢字と人名用漢字以外の漢字は出生届に受け付けられない。ただし、読み方は自由となっており、読みにくい人名漢字も多くある。《水滴》(すいてき)
書道で墨をする時に、適当な量の水を硯に注ぐことのできる水入れのこと。簡易で安価なものから高価で豪華な物まで様々ある。《雀威し》(すずめおどし)
「掛軸」の「風帯」のことで、「燕威し」ともいう。→「表装」《硯》(すずり)
墨をする道具で「文房四宝」のひとつ。材質は今は石が一般的だが、近年はプラスチックやセラミックを原料とした人造硯もある。値段は数百円から数百万円するものまで様々である。■著名な硯
●中国
端渓石:広東省肇慶府高要県斧阿山一帯で産出され、石紋、色合いが美しい。唐代から採掘されて現在に至っている。歙州石:江西省徽州府務源県で産出され、端渓と並び称される。青黒色の色合いで、さまざまな紋様がある。
松花江緑石:吉林省北部扶余県松花江沿岸の砥石山麓で産出される。刷毛ではいたような細い縞目か通っている。
桃河緑石:甘粛省臨濯県桃州で採られたが産出場所の記録がなく、今では幻の硯である。「蘭亭」「蓬莱」の大硯が有名。
紅糸石:山東省で産出。紅糸色の石模様が現れている。
橋頭石:遼寧省で産出し、暗紫色の重なったもの、黄色と緑色が重なったもの、紫色だけのものの三種がある。
空青石:甘粛省で産出し、緑色を基調とする。
建州石:福建省で産出し、紫色をして端渓に似ているので福建端渓ともいわれる。
興化石:福建省で産出し、淡赤紫色で細い銀線が走交する。
溜州石:山東省溜川の流域で産出する。
尼山石:山東省四水県で産出し、褐色である。
谷山石:湖南省長沙谷山で産出。淡青または緑色。
駝磯島石:山東省駝磯島で産出し、淡い緑色か淡い青色である。
黎渓石:湖南省明山の黎渓で産出された。別名を明山石ともいう。
方城石:河南省方城県で産出する。淡緑、深緑、灰色の三種類がある。
溜陽石:湖南省溜陽付近で産出する。浅緑色である。
鞏石:甘粛省鞏州付近で産出する。緑色で水波紋がある。
白河石:陜西省白河県で産出する。縹碧または墨緑色である。
螺渓石:台湾西螺渓で産出する。黒、青、暗喝色などである。
羅紋硯:硯石面に羅紋という石紋か出ている硯の総称。歙州石、駝磯島石、玉山石、新羅紋石などである。
澄泥硯:泥を焼成したとする焼成硯説が存在するが、伝説であり主に山西省で産出する。
●韓国
渭原石:屑原江の水底または左岸一帯で産出する。粘板岩で青・緑・紫の層からなり、朝鮮で唯一美麗な硯石といわれる。大理石のようにつるつるしている。鐘城石:豆満江右岸の鐘城付近で産出する。黒色の粘板岩で、堅い石質である。
大同江石:大同江流域の山で産出する。緑色を基調とする粘板岩で、暗喝色のものもある。
海州石:海州近くの瓮津で産出するので「瓮津石」ともいう。緑色を基調とした粘板岩で、暗黄色のものもある。朝鮮第一のものと言われる。
●日本
雨畑石:山梨県南巨摩郡鰍沢町雨畑の稲又山で産出する。元禄時代から採掘されていて、磨墨、発墨ともに日本最高といわれている。粒子が細かく水もちが良い。玄昌石:宮城県石巻市雄勝町で古くから産出されてきた。雄勝硯ともいう。黒色またぱ暗藍色で肌ざわりが滑らかである。
赤間石:山口県厚狭郡西村で産出する。赤みを帯ひた紫色が基本だが、緑色を帯びたものもある。つやのある色彩に輝いて美しい。
龍渓石:長野県上伊那郡辰野町の横川竣の山腹で産出する。高遠藩が財政再建のために御留石としたため「高遠石」とも呼ばれている。青みがかった黒色である。第一級品といわれている。
金鳳石:愛知県南設樂郡鳳来町で産出する。石質が極めて緊密で、金星、銀星があり、よいものは歙州石に近いものもある。
那智石:三重県熊牟婁郡三輪崎付近で産出し、「那習黒」といって碁石の黒石や、床の飾り石などにも使用されている。黒くつやがあって美しいが堅すきるともいわれる。
高田石:岡山県真庭郡勝山町で産出する。粘板岩である。
紫雲石:岩手県東盤井郡で産出する。「正法寺石」ともいい、赤褐色および緑色で、紫の石紋のあるものもある。「瑞井石」「三井石」ともいわれる。
大子石:茨城県久慈郡大子町で産出する。光沢のある黒色である。
桜川石:群馬県利根郡沼田町で産出する。微黄禄色て満面に豆のような形の斑点が大小入り乱れている。
高島石:滋賀県高島郡で産出する。黄褐色を帯びた淡い墨色のものが普通である。青黒色の斑点が散在するので「虎斑石」という別名がある。
嵯峨石:京都市右京区嵯峨で産出する。黒色のものと淡紅色のものとがある。出所により「清滝石」「鳴滝石」「鞍馬石]などとも呼ばれている。
蒼竜石:高知県中村市西南部で産出され、別名を「中村石」ともいわれる。青みがかった堅い原石である。中には、貝の化石やいろいろな鉱物が付着した美しい模様をもったものもある。「中村硯」「土佐硯」として販売されている。
田の浦石:北九州市門司区田の浦で産出される淡紫色の石で、青筋または翡翠斑に似た紋がある。
若田石:長崎県対馬で産出する。蒼黒色で鋒鋩が鋭い。
《砂子》(すなご)
短冊や色祇、屏風などに金箔や銀箔を粉末にして吹きつけたもの。《墨》(すみ)
煤を原料とし、膠を混ぜて作る。膠のにおいを消し、防腐するために、香料や漢方薬を添加する。作品に書き上げ、定着し乾燥すると濡らしてもにじむことがない。墨の種類
松煙墨:松を燃やした煤を原料にした墨のこと。
油煙墨:菜種曲、ごま油、桐油、椿油、麻油などを燃やした煤を原料にしている。
工業煙墨:重油、軽油なとの鉱物性油脂を燃やした煤を原料にしている。安価で多量生産でき、質も徐々に改良されているが、天然の油煙墨よりは品質が悪いといわれる。
墨汁の種類
活墨:すりたての墨汁のことで、粒子が活発にブラウン運動をしている。
宿墨:すってから一晩を経過した墨汁のことで、墨に含まれている「膠」がほどよく粘るため、好む人もある。
死墨:すってから幾日も経過した墨汁のことで、粒子の活動が停止している。
墨液:機械ですった墨を容器に入れて密封したもの。近年は品質がよくなり、作品用に用いる人もいる。
日本の墨の生産地
鈴鹿墨:三重県鈴鹿市
奈良墨:奈良県奈良市
《成語印》(せいごいん)
風雅なことばや格言、詩文等を彫った印のこと。→「築刻」《青田石》(せいでんせき)
篆刻の印材で、中国浙江省青田県で産出する。「燈光凍」「魚脳凍」などの高級印材から、練習用と言われる「図書石」まで様々ある。《歳暮》(せいぼ)
1.歳末に、お世話になった人などへ贈る贈り物のこと。関東は12月初めから中旬頃までに、関西は12月13日以降に贈るという。「お中元」よりやや高価な物の場合が多い。表書きは「お歳暮」。お返しも「お歳暮」として改めて贈る。あわててお返ししなくても「お年賀」等の別の機会にお礼をするのもよい。2.歳末・年末・年の暮のこと。
《青墨》(せいぼく)
青黒い色が出る墨のこと。「松湮墨」が50年以上経過すると自然に青味が出るといわれている。近年は藍や青系の顔料を混入したものもある。《姓名印》(せいめいいん)
「雅印」のひとつで、姓名を彫りこんだ「白印」。→「篆刻」《石碑》(せきひ)
文字を彫りこんだ石のこと。「いしぶみ」ともいう。中国の皇帝や名士の事蹟の記録が、時の書道家によって書かれた。印刷技術がなかったころも、古い能書家の筆跡を後世に残すことができたため、書道の発展に寄与したといっても過言ではない。正面に書かれた内容が主文であり一番重要だが、側面や背面にも建碑の理由、書者、発起人、石工等のことが記録してある。これをこ「陰記」または「碑陰」という。断碑:壊れた石碑の一部分のこと。日本では「宇冶橋断碑」、中国では「興福寺断碑」が有名。「半截碑」ともいう。
碑額:石碑の正面の一段高い所に刻してある標題のこと。「題銘一題額」ともいう。「篆書」の湯合は「篆額」という。
碑喝:四角柱の石碑を「碑」、円柱の石碑を「喝」という。
碑面:石碑の表面、正面のこと。
碑文:石碑の表面の文章、本文のこと。
●碑の種類
1.「頌徳碑」:功徳を称賛するもの
2.「記念碑」:事蹟を後世に記念するもの
3.「名蹟碑」:名勝旧跡の顕彰
4.「墓碑」:故人の戒名、俗名、没年などを刻した墓石
5.「作善碑」:追善供養のためのもの
6.「歌碑、句碑、詩碑」:短歌、俳句、詩などを刻んだもの
《石紋》(せきもん)
硯石に出る紋斑のこと。硯石の種類のより多種多様なものがあり、鑑賞価値を高めたり、鑑定手段ともなっている。《石鼓文》(せっこぶん)
唐初期に鳳翔府天興県で出土した太鼓のような丸い石でできた花崗岩の石碑。または、それに書かれた篆書のこと。現在は、北京の故宮博物院にある。中国最古の刻石で、書かれた内容が狩猟に関するものであるため「猟喝」ともいう。《節筆》(せっぴつ)
孫過庭の「書譜」では、点画の途中などで通常の書き方では現れないような節や曲がりが生じている部分がある。このように書くにはどうするのか謎とされてきたが、昭和4年に松本芳翠が論文で、節筆は紙の折り目によるものだということを明らかにした。具体的には紙を山折にして罫線の役割をさせて書いていたが、折り目のところに偶然筆線がかかってしまったもの。書譜では後半に差し掛かると、わざと折り目に文字をかぶせて書いているように見受けられるところもある。節筆は、王羲之の草書などにも見られる。《接筆》(せっぴつ)
点画の接する部分の筆づかいのこと。《説文解字》(せつもんかいじ)
最古の漢字字典で、後漢時代に許慎が作り、100年に成立した。当時の九千余字の漢字を、篆書の字形をもとにして部首別に配列し、その成り立ちを解説し、字の本義を記している。《撰》(せん)
石碑などの文章を作ること。「撰文」ともいう。詩歌、和歌などを選ぶこと。編集著作すること。《全鈎》(ぜんこう)
筆のもち方の一種で、すべての指を筆にかける方法のこと。《宣紙》(せんし)
中国安徽省宣州一帯で生産される書画用紙のこと。青壇皮と稲藁を主原料とし、耐水性・耐蝕性に優れて強度があり、書画に適している。「画仙紙」とも言う。《全紙》(ぜんし)
書道用紙で、漉いたまま裁断していない紙。縦136.3センチ、横70センチ(4.5×2.3尺)。これを縦長半分に裁断した大きさを「半折」という。《線質》(せんしつ)
書の筆線が醸し出す性質。用筆法の違いや、墨・紙の違い、技法などによって、重量感、軽妙、豪快、清澄、渋み、野生味といった多様な線質となる。また、筆者の人間性や美的感覚により異なる線質が生まれる。《千字文》(せんじもん)
中国梁の武帝が周興嗣に文を作らせた、「天地玄黄」から始まる四言250句・1000字の韻文で、一文字も重複がない。周興嗣は、皇帝の命を受け、一晩でこれを作り上げ、献上するときには白髪になっていたという伝説がある。また、殷鉄石に命じて王羲之の字を集字させて書道の手本とした。千字文は多くの国で漢字の初級読本となり、歴代の能書家が千字文を書いている。有名なものに「智永真草千字文」「懐素小草千字文」「孫過庭草書千字文」「欧陽詢草書千字文」「趙松雪行書千字文」「三善為康続千字文」などがある。《専帖》(せんじょう)
ひとりの能書家の書を集めて一冊の「法帖」にしたもの。→「集帖」《線装本》(せんそうぼん)
糸で綴じて装丁した本のこと。→「袋綴し」「和装本」《剪装本》(せんそうぼん)
拓本の文字の部分を切り取って「法帖」などに仕立てたもの。《磚文》(せんぶん)
磚とは煉瓦のことで、主に中国漢時代に煉瓦に書かれた文字のこと。《扇面》(せんめん)
扇型の料紙、あるいは扇の表面、扇そのもののこと。白や色彩豊かなもの、折り目のあるものとないものなど各種ある。書く題材としては、和歌や漢詩などが多い。扇の要を中心とし、文字の大小・散らし方などの工夫により、色祇などとは違った表現効果が発揮できる。《増減筆画》(ぞうげんひっかく)
「篆刻」で画数の多き複雑な文字の場合に、画を省略して整えること。《双鉤填墨》(そうこうてんぼく)
文字を写し取る技法のひとつ。写そうとする文字の上に薄い紙を載せて謄写する。まず輪郭線だけを写し取り(双鉤)、その輪郭線内に墨を塗り入れる(填墨)。「双鉱廓填」ともいう。→「響搨」《双鉤法》(そうこうほう)
1.筆の持ち方のひとつ。筆の軸を親指と人差し指、中指とで挟んで持つ。2.「練習法」のひとつで「篭字法」のこと。
3.「印刀」の持ち方のひとつで、筆の持ち方と同じ。
《草書》(そうしょ)
篆書や隷書を簡略化し速書きするために生まれた書体。崩し方によって、行書に近いものから、判読が難しいほど省略されたものまで様々ある。
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