《太陰暦》(たいいんれき)

「太陽暦」が太陽の運行を基準に定められた暦なのに対し、月の満ち欠けを基準に定められた暦のこと。日本における旧暦は太陰暦に分類される。

《太子硯》(たいしけん)

長方形で、左右に高い脚があり、硯の裏に手を指し入れるようにくりぬかれている硯。

《大篆》(だいてん)

周時代の初期の篆書で、秦時代に始皇帝が全国共通の文字とした篆書を「小篆」と呼ぶのに対する語。「甲骨文字」がやや発達したもの。

《太陽暦》(たいようれき)

太陽の運行を基準にしてつくられた暦のこと。現在、世界のほとんどの国で採用されている。日本では、1872年(明治5年)より採用された。

《拓本》(たくほん)

石碑等に紙を当て、上から墨をつけて、字形をとったもの。文字が黒くて他が白いものはほとんどこれである。

拓本の種類

淡黄拓(淡拓):薄い紙に墨を少なくしてタンポでたたいたもので、蝉の羽のようなところから「蝉翼拓」とも言う。
烏金拓:真っ黒に拓したもの。
隔麻拓:対象物に紙をかぶせ、麻布の上から叩いて密着させてから拓したもの、麻の紋様が出る。

《畳紙》(たとうがみ)

1:書きあけた「色紙」「短冊」を収める紙のこと。
2:厚手の和紙に、渋や漆などを塗り、折り目を付けたもの。結髪の道具や衣類などを入れる。
3:「懐紙」のことで、詩歌の詠草や鼻紙に使う。

《為書》(ためがき)

「落款」に「○○○氏のために」という意味で「為○○○氏」と書く場合のこと。

《断簡》(だんかん)

切れ切れになってしまった書や書の断片のこと。

《単鈎去》(たんこうほう)

筆の持ち方の種類のひとつで、親指と人差し指で挟んで持つ方法。

《短冊》(たんざく)

書画を書く厚紙で、通常の大きさで縦36センチ、横6センチのもの。
自詠の歌を二行に書く場合は、二行とも頭を揃え、落款は「○○」とする。他詠の場合は、二行目の頭を一字分下げて(下げずに揃える場合もある)、落款も「○○かく」として区別する。「たんしゃく」とも言う。

《単体》(たんたい)

一文字一文字が独立していてつながっていないこと。「連綿」に対することば。単に「一文字」の意。

《断碑》(だんぴ)

壊れた石碑の一部分のこと。中国では「興福寺断碑」日本では「宇治橋断碑」などがある。

《断筆》(だんびつ)

「運筆」で、一旦筆を紙から離すようにし、改めて打ち込み、次の方向に進む方法。主に「転折」の部分で使われる。

《短鋒筆》(たんぽうひつ)

「鋒」の短い筆のこと。

《竹筆》(ちくひつ)

若竹を裂いて作った筆のことで、別名「笋筆」(じゅんひつ)ともいう。

《帙》(ちつ)

書物が傷つくのを防ぎ、保護するために包装するもの。多くは厚紙に布を貼ったもので、書物を左右から覆う。天地左右から包むものを「折り込み帙」という。

《竹簡》(ちっかん)

紙が発明される以前、文章を記すために竹を削って札状にしたも。通常は日常の文書を記すのに用いられた。

《茶掛》(ちゃがけ)

茶室にかける書画のこと。さまざまな形があり、小型のものが多い。茶席での掛け物は禅僧の墨跡に限られるが、現代では、床の間など掛ける小品仕立ての掛軸のことも言う。普通の条幅と違って、字句の内容・書の趣も古雅風韻のあるものを選ぶことが多い。

《着腕法》(ちゃくわんほう)

枕腕法」のこと。

《茶の子》(ちゃのこ)

仏式、神式の法要で比較的軽い引出物のこと。

《中》(ちゅう)

掛軸の「中廻」のこと。

《紐》(ちゅう)

「印章」のつまみのこと。さまざまな形態があるが、獅子の姿が代表的である。

《籀文》(ちゅうぶん)

古代中国の戦国時代に秦で用いられた書体。西周の金文から派生し、石鼓文の字体に似ている。これを簡略化した小篆に対して「大篆」とも呼ばれる。

《中縁》(ちゅうべり)

軸の「中廻」のこと。→「中」「表装」

《中鋒》(ちゅうほう)

文字を書くとき、「鋒(筆の先)」が筆線の中央を通る書き方のこと。隷書や篆書を書くときの基本的な筆使い。

《中廻》(ちゅうまわし)

単に「中」、または「中縁(ちゅうべり)」ともいう。「掛軸」の「天地」と「一文字」の間の部分のこと。「本紙」の左右の中廻のことを「柱」という。

《長沙筆》(ちょうさひつ)

1954年、湖南省長沙近郊の左家公山で発掘された戦国時代の楚の墓から出土したため、この名がついた。毛の材質は兎で、木の筆管に毛を巻きつけた上から細い糸で縛り、漆で固めてある。この筆が発掘によって、秦の将軍。蒙恬が筆の始祖であるという説は覆された。

《長条福》(ちょうじょうふく)

通常の135cm×35cmというサイズより長い条幅をいう。

《鳥書体》(ちょうしょたい)

古代中国、春秋戦国時代の金文書体の一種。主に楚・呉・越など、南方の国々でよく使われ、各文字のところどころにに鳥の頭のような装飾的な形を持っている。こういう書体をいう。「鳥篆」ともいう。

《鳥篆》(ちょうてん)

→「鳥書体」

《直勢》(ちょくせい)

直線的な線による文字の形どり方のこと。→「背勢」「向勢

《直筆》(ちょくひつ)

筆を真っすぐに立てて書く方法のこと。「筆鋒」は筆線の中を通るため、円みを帯びて厚みのある線が引ける。

《散らし》(ちらし)

「かな書」でのの字配りのこと。行列・行頭をそろえて書かないで、行の長短や曲直を織り交ぜて、風雅に字の配置する。
散らし方には一定の決まりがあるわけではなく、それぞれの感性で自由に書いて構わないが、かな書の長い歴史の中で、次のように分類もなされている。
1.高低式:行頭が高低の繰り返しとなっている。
2.逓下式:中央の行が高く、左右の行が下がっている。
3.混合式:高低式と混合式が混合している形。
4.左右分裂式:色紙の中央の縦線を中心にして、左右二つの集団に分裂している。
5.右下左上分裂式:右下と左上にそれぞれ集団をつくっているもの。
6.上下分裂式:上と下にそれぞれ集団をつくっているもの。
7.虚実分裂式:色紙中央より右または左に―つの集団をつくり、反対側は空白にしているもの。

《珍寿》(ちんじゅ)

1.95才のお祝い。「珍」の字の偏を「一」「十」「一」と分け、旁を「八」「三」と分け「1+10+1+83」で95とする。
2.110才のお祝い。または111才以上、112才以上、120才以上。これほどの長寿は珍しいことから。

《枕腕法》(ちんわんほう)

左手を枕にして、その上に筆を持った右手を乗せて書く方法のこと。「着腕法」ともいう。

《対幅》(ついふく)

一対になっている書画の掛け軸のこと。「双福」ともいう。

《対聯》(ついれん)

中国の伝統的な建物の装飾のひとつで、門や客間の両脇に対句を記したもののこと。また、その形式で二枚一組の紙に書いたもの。「楹聯(えいれん)」とも呼ばれる。長寿を祝うものを「寿聯」、結婚・昇格などを祝うものを「喜聯」、弔事に用いるものを「挽聯」という。書かれる言葉は対句で、左右の聯が必ず同じ品詞の並んだものでなければならない。

《突き当て》(つきあて)

「逆筆」ぎみに筆を突き当てる要領で「運筆」すること。

《月の異名》(つきの・いみょう)

日本で古くから数詞以外の呼び方で表現された月の呼称、旧暦での呼称である。「落款」で年月日の数字を並べるのではなく、年号と干支、「月」をこの異名で書く場合が多い。

1月 睦月(他に、正月、祝月、初月など)
2月 如月(他に、梅見月、初花月など)
3月 弥生(他に、花見月、桃月など)
4月 卯月(他に、卯花月、花残月など)
5月 皐月(他に、菖蒲月、早苗月など)
6月 水無月(他に、五月、雨月、常夏月など)
7月 文月(他に、七夕月など)
8月 葉月(他に、月見月、女郎花月など)
9月 長月(他に、夜長月、寝覚月など)
10月 神無月(他に、時雨月、紅葉月など)
11月 霜月(他に、菊月、神楽月など)
12月 師走(他に、極月、春待月など)

《旁》(つくり)

漢字の構成で、左右に分けられる時の右の部分。→「へん」

《露花》(つゆ)

「掛軸」の「風帯」の下端につけた小さな総のような糸のこと。白いものを「露」、色物を「花」と言う。→「表装」

《提腕法》(ていわんほう)


筆を持つときの腕の構え方の一種で、筆を持った右腕を紙面に軽くつけて書く方法。「懸腕法」に比べ自由に動かすことができないが、安定するためかな文字や細字を書くのに向いている。

《手鑑》(てかがみ)

古筆の断簡を、折本に貼り込んだもの。古筆を手軽に鑑賞できることからこの名で呼ばれる。書の手本として用いられることも多い。

《手漉》(てすき)

紙を漉く時に、機械ではなく人手で漉くこと。

《粘葉本》(でっちょうぼん)

本の綴じ方のひとつで、紙を中央で折り、そこに糊づけして貼り合わせる方法。「粘葉装」「胡蝶本」ともいう。→「袋綴じ」
この綴じ方で製本された古筆として「粘葉本和漢朗詠集」が名高い。

《田黄》(でんおう)

石印材の一種で、黄色の半透明の肌色をしたもの。田んぼの中で見つかったためこの名がある。

《点画》(てんかく)

文字の一点一画のこと。

《篆額》(てんがく)

篆書の額、または「石碑」の上部に書かれた標題のこと。

《篆刻》(てんこく)

印象を作成することで、主に篆書を印文に刻することからこの名がある。姓名印・雅号印(落款印)、関防印、成語印などがある。

・白文印:文字の部分が彫りこんであり、文字が白くなる。
・主文印:文字の部分を残して周りを彫ってあり、文字が朱色に出る。
・姓名印:本名の姓名を彫った印。主に白文印。
・雅号印:雅号を彫った印。主に主文印。
・関防印(引首印):作品の右肩に押す印で、好みの文言、座右の銘・吉語・閑雅・禅語など自由な内容を彫る。白文印が多いが、主文印でもよい。印形も正方形でなく長方形や楕円形が多い。
・成語印:風雅な文言・格言・詩文等を彫ったもの。

・印材:木・竹・銅・玉・骨・陶・ガラス・石など、様々なものが利用されてきたが、現在は石が主流である。柔らかい蝋石が特に優れている。寿山石(福建省寿山県)、青田石(浙江省青田県)などが有名。また古くから印材を楽しむ趣味かあり、「田黄」と呼ばれる黄色い石が石印材の王様とされ、次いで血のような赤い部分のある「鶏血」や卵の黄味を固めたような「蘭花青田」などが鑑賞用として珍重されている。
・印刀:印を刻む刀のこと。篆刻刀、鉄筆ともいう。刃の形状としては、円筒形、偏平角形があり、大きさも各種ある。中鋒(両刃)、片鋒(片刃)がある。
・印泥:印を押すときの印肉や朱肉のこと。朱泥ともいう。よもぎを乾燥させた「艾(もぐさ)」、硫化水銀の「珠砂(しゅさ)」と植物油が主原料。因泥の色の種類としては、「箭鏃朱砂印泥」(黄色っぽく鮮やか・高級)、「光明朱砂印泥」(赤みを増したもの)、「美麗朱砂印泥」(さらに濃い赤)があるが、近年は金・銀はじめ様々な色のものがある。
・印矩:印を押すときの定規で、形はL型、T型があり、材質としては黒檀・紫檀・木製・プラスチック等がある。
・印褥:印を押すときの下敷き。半紙を数枚重ねても代用できる。
・印盆:印池ともいい、印泥を入れる容器のこと。
・印床:印を刻するとき、印材を固定するための台のこと。印床を使わずに、印材を手に持って彫る場合もある。
・紙ヤスリ:印面を整えるために必要。耐水ペーパーを使うことが多い。
・印文:印に刻する字句のこと。
・校字(印稿):印文について、字典で正しい字形や書体を選び、紙面に書いて草稿を練ること。
・側款:印材の側面に、干支・詩文・月日・依頼者・刻者などを彫ること。

《添削》(てんさく)

書道の場合、書作品を朱筆等で直すことで、学習者のものを指導者が直すことを言う。

《篆書》(てんしょ)

漢字の書体のひとつ。広義には、秦代より以前の文字全般を指すが、一般には周代の金文から始皇帝が文字の統一をした公式書体である小篆までを言う。狭義には小篆のことを言う場合もある。小篆に対し秦代より前のものを「大篆」というが、「石鼓文」のことを狭義の大篆とする場合もある。

《転折》(てんせつ)

文字の折れ曲がる部分のこと。「折れ」「折筆」「曲尺」ともいう。

《天地》(てんち)

1.作品の上と下のこと。2.掛軸の上部と下部の裂地部分のこと。→「表装」

《転注》(てんちゅう)

漢字の「六書」のひとつ。古来諸説あったが、ある意義を持つ漢字をその音とは無関係に、それと近い意義の語に用いること。

《陶印》(とういん)

陶器で作った印のこと。

《唐硯》(とうけん)

中国製の硯のこと。端渓、飲州、桃河、緑石、澄泥硯などが有名である。

《堂号》(どうごう)

姓以外につける別名のこと。例えば「石舟斎」などのような名前。

《塔銘》(とうめい)

僧侶が葬られる際に、石を高く積んで遺骨を納めるために建てた塔に刻んだ銘文のこと。一般の「墓誌」にあたる。「功徳塔」「方墳記」「霊塔銘」ともいう。

《搨模》(とうも)

真蹟の輪郭を複製し、その中を塗りつぶす「双鉤塡墨」による模写のこと。「臨摸」ともいう。

《鳥の子紙》(とりのこがみ)

雁皮に楮を混ぜて漉いた、やや厚手の紙。「厚様」ともいう。なめらかで艶があり、淡黄色をしている。その色が鶏卵に似ていることからこの名で呼ばれる。

《頓節》(とんせつ)

→「節筆」