人生初となる能登への旅行に行ってきました。以前は考えられなかったことですが、今や能登は日帰りで行かれる範囲なのですね。
能登の里山と田んぼ
 羽田−能登間はANAの便のみで朝は8:50羽田発。飛びたったら約一時間でついてしまうので、まさに”ひとっ飛び”と言う感覚です。途中、眼下に東京の街並みから甲府盆地と富士山、やがて私の故郷長野県が見えてくると諏訪湖まではっきりと見えました。松本平、北アルプスと懐かしい故郷を鳥の気分で上から眺めているうちに、あっという間に着陸態勢でした。
 地上に近づくにつれ奥能登のまるまるとした山々が近づいてきて、まるで昔話に出てくるような風景です。

1.中十七波さん、乃波木さん


 今回能登に行った最大の目的は、中十七波さんと乃波木さん母娘の親子展「大波小波展」に伺うこと。中十七波さんは、芸高・芸大と進み絵画を学ばれたのですが、それに飽き足らず中退。ひとりでフィジー、オーストラリアに渡りアボリジニアートを研究したのちテキスタイル会社を起業し、カネボウや東洋紡と契約しデザインを手掛けられた方。その後いろんないろんなことがあって、娘の乃波木さんとふたりで全く縁のなかった能登に移住し、陶房 眠兎を始められました。中乃波木さんは、12歳の時にお母さまと能登に来て、絵画や伝統工芸を学び、その後今までやったことのない方法で能登を表現しようと、推薦で東京造形大学に入学します。卒業後、いろんなことがあって能登を取り続ける写真家として活躍されています。

2.おふたりの句を書かせていただく

会場に展示していただいた短冊
 2013年、知人から「上條さんと話が会うと思いますよ。」と乃波木さんをご紹介いただきました。当時、乃波木さんは東京と金沢を行き来する生活をされていて、「何をなさっている方と思いますか?」と聞かれ、「歌人の方ですか?」と。ところが「写真家ですが、俳句も作ったことがあります。」とのことでいろいろとお話を伺うと、お母様の十七波さんは陶芸家で俳句もたくさん読まれると知ったのでした。
 すぐに、乃波木さんの句と十七波さんの句を書かせていただき、お二人に差し上げて、自由書道展にも出品しました。
 その後、乃波木さんは活動の拠点を金沢・能登に移され5年ほどがすぎたのですが、「大波小波展」とそれに合わせて出版される俳句とエッセイと写真で構成された句集「寒卵プリンに生まれ変はる午後」の出版を知ったのです。

3.能登への旅

 今回、句集に乗っている十七波さんの句を4句書かせていただき、「大波小波展」で展示していただきました。そのことがなくても能登に伺うつもりだったのですが、5年ぶりにお目にかかれ、初の能登も満喫できました。
天領庄屋 中谷家
 お恥ずかしいことですが、お二人の本業であるところの写真や陶芸作品をじっくり見させていただくのは初めてのことでした。会場は「天領庄屋 中谷家」。江戸時代前期に建てられたという立派なお屋敷がそのまま残っている、石川県の有形文化財だそうです。
 初夏の奥能登は、田んぼに稲が青々とし、山の緑は深く、黒い瓦の民家、透き通る青い海と空。心の奥深くをえぐられるような風景でした。